マラリア原虫はトキソプラズマと同じアピコンプレクス門に分類される原虫です。アピコンプレクス門には5,000種以上の寄生生物が分類されており、同門はアルベオラータと呼ばれる生物群に属しています。マラリア原虫によって引き起こされる感染症である「マラリア」は、熱帯、亜熱帯の70カ国以上(世界人口の半分強が居住)で流行しているとされています。全世界で年間に3〜5億人が感染し、そのうち100万人以上が死亡しているといわれています。また、アフリカでは小児の5人に1人がマラリアで死亡しているという恐ろしい病気です。そのためマラリアはエイズ、結核と並んで世界の3大感染症に数えられています。
人に感染するマラリア原虫には、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種が知られており、それらのうち特に熱帯熱マラリア原虫によるマラリアが重症化することが多く、大きな問題となっています。いずれの原虫もハマダラカ(Anopheles)によって媒介されることが知られています。
また、最近では各種殺虫剤に抵抗性を示すハマダラカの蔓延や、クロロキンを始めとする抗マラリア薬耐性マラリアの出現と拡散が報告されてきており、したがって既存の知識ではもはやマラリアをコントロールすることが難しくなってきています。新たな抗マラリア薬、あるいはワクチンの開発が切望されています。